うちのネコは毛を逆撫ですると、歯を向いて怒る。彼女は人格ができていないワガママものなのでそうなんだけど、他の犬やネコでも不愉快であることくらいはちゃんと表明するだろう。
逆撫ですると、不愉快なのである。で、あるがゆえに「人の神経を逆撫でするようなことを言う」などという言い方があるのだ。
しかし、翻って考えてみると、ワタシ自身はどうか。逆撫でされても、愉快じゃないにしても、不愉快ってほどではない。さきほど自分で髪の毛を逆撫でしてみたが、不愉快感は感じえなかった。
ワタシだけの自己実験だけを根拠にするいうのはナンなんだけど、どうも「逆撫でされると不愉快」というのは犬猫に関しての話なのかもしれない。
しかし、そこは同じ哺乳類であるがゆえなのか、毛を逆撫でされたときの不快感は皮膚感覚として想像ができる。やなんだろうなあと、感覚で理解できる。
だからこそ、「人の神経を逆撫で」うんぬんという表現が通用するわけだろう。
しかし、うまいこと言ったもんだね。最初にこの表現をハツメイした人は。
で、この用法はいつごろからあるのかということが気になった。
そこで日本国語大辞典を引いてみる。この辞典には初出(に近い)用例が掲載されているからだ。「逆撫で」の項に載っていた用例は里見とん(1926)、細田民樹(1930)、中島敦(1942)、開高健(1965-67)の4例、動詞の「逆撫でる」には瀬戸内晴美(1973)の1例。
つまり、昭和期に入ってからの用例しかでていないのである。これだけでは証拠になりにくいのだが、どうも明治大正以前には使われていなかった言葉でないかということがわかる。
だったらもしかしたら翻訳かも、と思い、今度は和英辞典を引く。英語にうといワタシは知らなかったんだけど、ちゃんとそのものずばりの表現があるんだねえ。
さかなで 逆なで
¶逆なでする rub 《a cat》 (up) the wrong way / (人の)神経を逆なでするようなことを言う say things that rub sb (up) the wrong way.「研究社和英中辞典」
きっとこの英語表現を日本語訳したのが「さかなで」であるのだろう。誰がどんな場面で最初に訳したのだろうか。すんごくうまい訳だと思う。気になるなあ。