まずはともかくこの動画を見ていただきたい。けっこう有名になった動画であるから、すでにネットやテレビでご覧になった方も多いかもしれない。「道具を作るカラス」の映像だ。
この動画クリップはいろんなところに存在しているが、本家は実際にカラスの知能的な行動を研究し、この動画を撮影したオックスフォード大学の
行動生態学研究グループのサイトがもっともお勧め。ほとんどの人がまだ見たことがないだろう関連動画もどっちゃり含んでいるからだ。
QuickTime、1分強の短いビデオクリップだが、非常に興味深い映像だ。画面に1羽のカラスが登場する。画面中央にはアクリルの筒が鉛直方向に突き立っている。この透明の筒の中には筒ぴったりの太さのえさ入りのパックが入っている。パックには取っ手のようなものがついているため、鍵状のもので引っかければ、なんとか引き上げることができそうだ。
しかし、カラスに与えられているのはまっすぐの針金である。カラスはしばらくの間、そのまっすぐの針金でパックを釣ろうと努力するが、それがかなわないとみると、ためらわず針金を地面におしつけ、先端を曲げる。
曲げた針金でえさ入りのパックを釣り上げるのだ。
釣り上げた瞬間に、微妙に羽を一瞬広げる。「やった」という喜びの発露に見えてしまう。
「人間は道具を使うサルである」なああんていう「定義」らしきものが喧伝された時代もあったが、人間以外にも道具を使う動物はいくらもいることがわかって、それ以来、道具の使用は人間の専売特許ではなくなった。
しかし、人間ってのは、自分たちと動物との間に、越えがたい川を作りたがる衝動が強いようで、そのあと、「道具を作るのは人間だけ」なんて陣地まで後退して、そこを死守する勢いだった。
でも、この動画で、その砦もはかなく消えたね。
カラスは針金を自らの意志で曲げて道具を作ったのだ。
このカラスはメスのベッティという名。アベルというオス(けっこう年配らしい)と一緒に暮らし、一緒に研究グループの実験をこなしている。
わたしがはじめてこの動画を見たのはNatureのサイトであったのだが、そこではわからなかったことを、本家のサイトではいくつかの動画を通して見ることができる。
よくわかんないんだけど、ベッティたちは、同じ実験装置での実験を何度か繰り返しており、これ以前に「曲がった針金を与えられて、それを使ってパックを釣り上げる」という経験をしているみたいだ。ま、そういう意味では「知ってた」わけだよね。
しかし、そういう内幕をしっても、ベッティのすごさは、いささかも減じないと思うんだけど。どーかな。