絵を描くゾウのことを考える時、気になることはゾウが色を識別できるのかということだ。周知のように、多くの哺乳類は色の識別ができないとされている。ネコやイヌは単色の世界として見ているとされている。ゾウはどうなのか。
鳥は色の識別ができる。哺乳類でも霊長類(つまりサルやね)はカラーOKだ。ゾウはどうなのだろう。
もうひとつの疑問は、ゾウ達はなんのために、何のつもりで絵を描いているのか、ということだ。絵を描くことが面白がっているのか? 作品に対する自己評価はどのようなものであるのか?(つまり、今度はうまく描けたな、とかと思っているかどうか)
絵を描くのがおもしろい、今日の作品は昨日のよりいい、ここはやっぱり黄色だろう、なんてことをゾウが感じているとしたら、これはやっぱりスゴイことだと思う。そういうことはゾウが自然界で生きていく上で、なんのメリットももたらさないように思えるからだ。
しかし、そうじゃなくって、絵を描くと飼育係が喜ぶ、とか、おいしいご褒美をもらえるとかの理由で絵を描いているとしたら、ちょっとがっかりだね。それはたんなる「芸」であって(「芸」を行うにも知能は必要だけど)、いま考えている「動物の知能」という範疇には入らないように思えるからだ。
絵を描くゾウは、ランプーン象保護センター以外にも存在する。もっとも有名なのはアメリカ、フェニックス動物園のルビーという名のメスの象だ。
phoenix zoo: Rubyのページには、彼女の作品がひとつ掲載されている。作品の見た目はランプーンの象たちのものと似た感じだ。
しかし、ここにはルビーの色使いに対し、驚くべきことも記されている。消防車が来た時には消防車の色を使い、来客の服の色を使った絵を描くというのだ。これはルビーの「意志」なのか、それとも観察者側の過剰な意味付けに過ぎないのか。たとえばウチのネコ(名は「コウ」)はキーボードで「こおおおおおおおおおおおおおお」と入力したことがある。見たときは一瞬ぞっとしたけど、キーボードの配置を考えると、偶然であると考えるのが自然だ。
ただ、このページによると、ルビーは砂の上に鼻で模様を描いて「楽しんで」いたのを見つけた飼育係が筆を与えたということになっている。これも記憶しておいていい情報だろう(もちろん「思い込み」「ウソ」という可能性を排除しないで、ということだよ)。
このルビーの絵は、フェニックス動物園に大きな収入をもたらした。年間10万ドルだそうだ。
TokyoZooNet えさ代ランキングによるとアジアゾウの1日の食費は10,793円だそうだから、ルビーは自分の食いぶちの3倍程度は稼いでいたことになる。この金額もまた記憶しておいていい。
ゾウ芸術をテーマにしている組織もある。
Asian Elephant Art & Conservation Projectがそれだ。つまり「アジアゾウ芸術および保護プロジェクト」。ここでもたくさんのゾウの絵を見ることができる。このプロジェクトはタイとバリとインドに拠点を持ち、その3ヶ所のどこのゾウも絵を描いている。このゾウたちを指導しているのは、コマーとメラミッドというふたりのロシア生まれのコンセプチャル・アーティストだ。この「コンセプチャル・アーティスト」というところもまた記憶しておくべきだろうね。この派の人々は、技法だとかなんとかはいっさいカンケーネーヨと考えているわけで、便器をごろっと置いても芸術だというハバツだからな。作品の思想性とかがダイジなのだから、過程とかはどうでもよい。
このサイト全体を見渡してみると、ゾウの絵による直接・間接の収入により絶滅の危機に瀕するアジアゾウの保護に寄与するという目的が見て取れる。この大義の前には「ゾウの自主性」なんてことは副次的なものになるだろうことは想像に難くない。
ああ、ゾウたちがどのようなキモチで絵を描いているかが、知りたい。
んでもって、それは「ナゼ人ハ絵ヲ描クノカ」(唄ヲ唄ウノカ)にも通じていく疑問だと思うんだけどなあ。