6 バーバルコミュニケーション
[初出] 2004.07.03 [最終更新] [平均面白度] 4.67 [投票数] 15 [コメント数] 0
言語とはなにか。これはとても難しい問題で、一朝一夕に理解できるものじゃない(と思う。だってぼくには結局わかんないんだもん)。
ただバーバルコミュニケーションって言うんですか? 音声的な意思疎通は猫との間で日常的に行っている。
萩は頻繁に外へでかける。事情があって猫ドアなどは取り外してしまったため、出たがるときにサッシを開け外へ出し、帰ってきたときにサッシを開けて中に入れる。このとき、「出たい」「入りたい」はおおむね音声によって意思表示される。萩がミュゥーオと鳴くたびに出し入れをするのだ。
彼らは声帯をうまくコントロールすることができないので、出せる音声の種類は少ない(この声帯をコントロールできないことについては、別途書こう)。
よっていろんな欲求が、ほぼ同じ(に聞こえる)ミュゥーオで表現される。
萩はツマの枕の真横に敷かれている30cm四方のタオルの上で行儀よく眠るのを習慣としている。ツマが本を読むのをやめ、スタンドを消灯したころに、彼女は静かにやってきて、器用にくるんと丸くなる。
しかし、ツマの読書が興に乗ったせいか、それとも萩の眠気がはげしいのか、時として、まだ明かりが煌々とともっているときにタオルにやってくることがある。そういうとき、いつもではないのだが、ミュゥーオと鳴く。これは電気を消せ、と主張しているのである。明るくって眠れやしない、と。
雨が降っている時にもサッシを開けろと鳴く。そこでサッシを開けてやる。外は雨だ。敷居のところで萩は躊躇する。小降りなら決然と出かけていくが、それも程度ものだ。あきらめて出ないときもある。
「でしょ。だから雨だと言ってるのよ」
サッシを閉める。するとまたすぐにミュゥーオと鳴く。
「え、でかけるの? 雨だよ」
また開けるが、しばらく考えて、萩はやっぱりでない。これが何度も何度も何度も繰り返される。
「ばっかじゃないの。さっきだめだったのをもう忘れたのかしら」
ぼくたちはそう言い合っていたのだが、ある夜、電気スタンドを消せと鳴く萩を見て、一気に理解した。
雨の日、彼女は「サッシを開けろ」と鳴いていたのではないのだ。あれは「雨をとめろ」と頼んでいるのだ。
明りを消すことも、水や餌をだすことも、やろうと思えばできるのである。できるからこそ頼んでいる(もしくは命じている)のである。なんで雨を止めることができないことがあろうか。
そういうふうに思っているのだろう。
それに気が付いてから、雨を止めてくれと頼む萩に対し
「ごめんな、雨を止める力はないんだよ」
と弁解につとめているのだが、いっこうに分かった気配はない。雨の日には、向こうが根負けしてふて寝してしまうまで、ずっとミュゥーオの連発に悩まされ続ける。
やはり、ヤツらはそう賢くはない。
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