12 悪行三昧
[初出] 2005.11.11 [最終更新] [平均面白度] 4.67 [投票数] 6 [コメント数] 0
もう何度も書くことですから、先刻お見通しのことであるかもしれませんが、ぼくは「動物の精神活動」ってことにとても関心があります。要するに、やつら何を考えてんだろう、ってこと。これはもう、動物と暮らす人なら、誰しもが常に気になっていることだと思います。
ほんと、なに考えてんでしょうね。どう思ってんでしょうね。
たとえば「善悪」。それぞれの家庭で犬や猫が「やってはいけないこと」が決まっています。決めたのは飼い主です。ウチの場合では、そのルールがよそ様に比べると極端に少なく、無法地帯です。これは我が家が築ん十年のぼろやであるからゆえでもあります。上等な家具もないので、爪を研ぐ行動に関しても寛容です。しかし、それでも若干のルールはあります。食卓の上にあがってはいけないとか、ガスレンジに乗ってはいけないとか、他のメンバーに理不尽な暴力をふるってはいけない、などです。ま、ほかにもいろいろ。
ですから、そうした行動は「悪」ということになっています。これはきわめて「社会的」に決められたにすぎないルールですね。別に猫と人の社会の中で必然的に出てくるルールじゃなく、我が家という限定された場所の中で恣意的に存在しているルールにすぎません。
でも、猫たちは、その行動を起こしたときに、何度も叱られるという経験を通して、それが「悪」であるということを学習していきます。
概して言うと、猫は犬に比べると、その学習がちゃんとできないように見えます。犬はルールを破ることをあまりしませんし、あえてする場合は、あるいみ、確信犯です。何がよくって、何が悪いか、ちゃんとわかって行動している。
その点、猫はダメです。何度叱られても、やっぱり「悪」いことを繰り返す。そこを指して犬派の人なんかは「猫は馬鹿である」とのたまうのですが、それはどうかなあ。別に猫の肩を持つわけじゃないんですが。だいいち、肩を持とうにも彼らにはそもそも肩なんかありゃしない。
考えるに、両者の違いは頭のよしあしではなく、もともとの生活型の違いに起因する「飼い主との関係のありかた」によるのでしょう。犬は群れで生活する動物ですから、飼い主と本人は同じチームの構成員であり、単独性の猫の場合は母子関係なんでしょう。会社で社長に「わざと悪いことをして気を引くとか甘える」なんて行動は誰もとりませんが、母子関係の中ではありがちですよね。
そう確信するのは、猫が「自分が悪いことをしている」ということを自覚しているとしか見えない振る舞いをするからです。ちゃんとわかってやっている。だから「悪い」ことをしている時は、こっちをチラチラ見るし、不満がある時に、ことさらにやってみせたりする。ま、これは犬にもある行動ですが。
そういうことから、「善悪」については、やつらもけっこうわかっているんだと思っておりました。
しかし、三毛を見ていると、その確信が大いにぐらつく。
あれだけは、「善悪」がいつまでたってもわからない。
そりゃ叱られると脱兎のごとく逃げますよ。でもそれは単に危険を回避しているだけのことで、「悪い」ことをしているから怒られているという因果関係はまったくわかっていないようです。その証拠に、平然と同じ行動を繰り返すし、その際に、毫もこっちを気にすることはない。
アタマが悪いわけじゃなさそうです。たとえば、三毛は水槽の前でいきなりバック転という素っ頓狂な行動をして、魚を驚かせて遊ぶ、なんてことをします。バック転をおこなうのはそこの場所だけで、行動のあと、かならず魚のうろたえるさまを観察していますから、これはおそらく意志的な遊びだろうとおもうのですね。こんなことは他の猫はやらなかった。そういう行動から考えても、アタマが悪いから「善悪」がわからないということでもなさそうです。
なんでしょうね、これは。
油断していると食卓に上がって、箸をくわえて逃げていく。いくらこっぴどく叱られてもチャレンジするし、しかも、人間がいても平気でトライしてくる。つまり「これをやったらおこられる」とは思っていないんですな。だから叱られると、いつも目をまんまるにして驚く。「なんでやねん」ってとこでしょうか。
偕はその点、「道徳的」ですから、三毛が「悪」いことをしているのを、首をすくめて見ている。「あかんで、そんなことしたらおこられるで」ってとこでしょう。こっちをチラチラ気にする。
他の猫がやらないことといえば、三毛は廊下から障子を食い破って書斎に乱入してくるという大ワザを繰り出します。これも他の猫はいっさいやらなかった。で、出て行く時は、別の場所を食い破って脱出するという悪辣なやりくちです。
なにしろ、どうやら「善悪」って概念そのものがわからないようなので、これは教育のしようがない。「悪」いことをしそうになったら武力でそれを阻止するしかないんです。やつには「徳育主義」は通用せんのです。しかし、四六時中哨戒活動に従事しているわけにもいかんので、どうしても犯行は頻発することになる。
それやこれで、三毛は今日も悪行三昧。
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